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バウハウスの人たちとその周辺
1919年にドイツはワイマールに設立されデッサウ時代、ベルリン時代を経て当時のナチズム政権の影響を受けてわずか14年で閉校した伝説の芸術学校(造形学校)バウハウス。
バウハウスは既に学校という概念を超越し、言わば生き物のように生きている哲学でもあり、時代によって解釈や認識のされ方も揺れ動いています。
初代校長であったウォルター・グロピウス(世界4大建築家の1人)自らが『バウハウススタイル』なるもの(安易な継承)の概念構築を拒み続けてきた事は事実で『バウハウスはスタイルではない』という前提条件としてバウハウスや当時バウハウスに携わっていた芸術家や建築家からの学びを考えていきたいところです。
初期バウハウスと呼ばれる開校当時のワイマール校時代のバウハウスではアーツ&クラフツ運動やウィリアム・モリスの提唱していた手工業、工芸志向から影響を色濃く受けていましたが、その後は機械的な合理性も追求されるモダニズムの時代の流れの中で、バウハウスが目指す芸術と機械工業の融合に向けた世界観が徐々に築かれていきました。
バウハウスのデザイン手法は派生を繰り返しながら近代、ミッドセンチュリー以降も拡がりを見せていき、現代でもあらゆるジャンルの建築家やデザイナーに影響を与えています。
バウハウスの哲学、思想とはグロピウスの哲学、思想と言って過言ではありませんが、当時特にグロピウスの偉大であった手腕は当時の建築、絵画、写真、音楽、舞台、織物、染色、版画、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、あらゆる芸術分野と商業分野の統合を目指したことにあります。
そしてナチズム政権やきな臭い社会情勢の中での政党や学校運営のための資金難と闘い、当時のヨーロッパ最高峰の芸術家たちを講師陣に迎え、未来を支える多くの生徒たちを輩出した功績にあります。
第一次世界大戦で敗戦国となり、まだまだ貧しかったドイツの社会情勢や世界的な恐慌の中、当時は授業料を払うお金はない、しかし学ぶ意欲と努力できる資質を持つ学生がたくさんいたという記述が残っています。
彼らの授業料を免除する補助金捻出のための政府への働きかけ、企業とタッグを組んでの学生たちによるプロダクトデザインプロジェクトや売上の創出など、グロピウスやモホリ・ナギ(写真家で当時の副校長)によってあらゆる尽力がなされたことや、当時のヨーロッパ最高峰の芸術家たちが自身の創作活動の時間を大幅に割き講師として「未来を担う人材への教育」に時間と情熱と体力を費やしたことでバウハウスが成立していたことも、バウハウスに関心を持つ方にとっては知るべき歴史だと思います。
モダンデザインの源流をなす歴史的なポジションとしてのバウハウスは既に散々語り尽くされてきたものですが、その上で私が今日、現代人がバウハウスから学びを得られると考えるのは「ジャンルを越境した個人と個人の統合」「今それぞれが置かれているジャンルを越境したものへの好奇心と学びの精神」と解釈しています。
文化的に集団生活や集団仕事が重んじられてきた日本でもこの10年ほどは「個の強さ」が際立つ時代、多様な価値観ある時代がゆっくりと築かれてきました。
ではその次は?そんなことは誰にも分かりませんが、しかし、結局人は1人では生きてゆくことができませんし、どんなに優秀な人でも1人でできることには限界もあります。
震災と向き合った10年があり、今日未知の疫病と共存する時代に突入し、これから先がまだまだ見えない中で私は「個の時代」が輝く時代のその先を考える上で、あらゆるジャンルを横断し統合を目指していた彼らの理念や作品は私たちの未来のための学びのヒントに満ち溢れているように思えてなりません。
このトピックでは当時のバウハウス、バウハウスの後継学校と評されたウルム造形大学やブラックマウンテンカレッジに直接携わっていた建築家やデザイナーの作品集をご紹介してゆきます。
21.04.27 志摩
※バウハウスにおいて最重要人物であるウォルター・グロピウス関連の書籍については別のトピックでラインナップしていく予定です。