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ディーター・ラムスの世界
良いデザインは革新的である。
良いデザインは製品を便利にする。
良いデザインは美しい。
良いデザインは製品を分かりやすくする。
良いデザインは慎み深い。
良いデザインは正直だ。
良いデザインは恒久的だ。
良いデザインは首尾一貫している。
良いデザインは環境に配慮する。
良いデザインは可能な限りデザインをしない。
ドイツ出身の伝説的なインダストリアルデザイナーであるディーター・ラムスが提唱する「良いデザイン」の十か条は現代の、そして多くの国で活躍するデザイナーに今尚影響を与えています。
直視するのが眩し過ぎる程に彼の業績は偉大なものですが、そのデザイン思想や理念は業界やジャンルを超えて評価されている点が特に偉大なものではないでしょうか。
究極に洗練され、完成された理念である上記の十か条の中で私がまず惹きつけられるのは「良いデザインは慎み深い」というもの。
日本にも詫び錆びという言葉、感覚、そして価値観がありますが、この「詫び」という日本人の精神でいうところの、落ち着いていて、静かで質素なおもむき、閑寂な佇まいという価値観に底通している印象です。
用の美にしてもしかりで、この日本にこのような文化的な土壌があることは、特に日本でラムスの理念やデザイン感覚は受け入れられ易い要因の一つになっているのかもしれません。
(脱線しますが、個人的に面白いなと思うのは、上記の十か条の中で私はこれが一番に惹かれる!というものが人それぞれ異なってくる点です。当たり前ですけどね。この中で、自分は特にラムスのこのアプローチが気になるんだ!ということがきっと自分の元々持っている個性に繋がっているのでしょうね。)
ラムスを歴史を振り返る上で、第二次世界大戦敗戦後ドイツの大貧困時代においても彼は学びの努力を怠ることなく、実に14年もかけて技術学校で建築ならびに大工技術を習得し、さらに建築家に師事し学問、スキルの基礎を築いた膨大な時間もまた注目すべき点だと思います。
このように学びの意欲を強く持ち努力を重ねてきたデザイナーは、「彼は天才だ」と一言で片付けられてしまうことをきっと嫌うことでしょう。
バウハウスの礎を築き世界の近代建築の四大巨匠と呼ばれるミース・ファンデル・ローエが残した「Less is More(少ない方が豊かである)」という言葉を更に進化させたラムスの有名な「Less,But Better(より少なく、しかしより良く)」というデザインアプローチを基に、ドイツの家電メーカー「BRAUN」や英国の家具メーカー「VITOSOE」で生み出されたプロダクト集、展覧会開催時の図録、ラムス来日時の講演議事録、そしてBRAUN社がラムスと共に築いた企業理念集など、このトピックではディーター・ラムスの世界の一旦に触れて頂ける計6冊をラインナップさせて頂きました。
彼の作品を生活の中で親しむだけであれば、書籍を読む必要はないかと思います。もし彼の作品や、その背景や根っこにある思想や理念を少しでも理解したいと思うに至った方には、きっと「本の存在」が役に立つはずです。
中には国内外に全く流通していないような幻の1冊もラインナップしており、ラムスファンの方にはもちろん、デザインやものづくりに携わるクリエーターや作家のためのデザイン論の参考書として活用いただくこともおすすめです。私は服を選ぶことを生業としていますが、このような私でも自分の仕事や生活の中で彼の言葉が強く、そして活き活きと影響を与えてくれています。
有難う!日本から感謝を込めて。
2020.12.10 志摩