「衝動と熱量」
本を読んでいて個人的にいいなあと思うのは、思考がスルスルと頭の中に入ること。これは主観的ではあるし、興味のあるものごとに限られるけれど、ウェブ媒体より効果が大きいんじゃないかなあと思っています。外国語など、今は翻訳アプリも進化しているので、google翻訳アプリ(無料)でスキャンしてみてください。ウェブにはない圧倒的な情報量があります。
もちろん紙がいいウェブがダメという二元論的なことではないけれど。
私は紙が好きで、紙にまつわるものの活動もしているので、MMSSで
FRANZ ZEIER の PAPIER VERSUCHE ZWISCHEN GEOMETRIE UND SPIEL
を借りてみたんです。FRANZ ZEIERはスイスの装丁家です。この本には、紙で彫刻のようなもの、レリーフのようなもの、美しい箱、オブジェが載っているのですが、猛烈に作ってみたいという衝動に駆られました。この衝動というのは、本ならでは。
真似をしたり、応用をしたり、質感のある紙に作品が印刷されているからこそ、実際に作って見てみたくなる。そういった衝動を駆るところが本にはあるような気がするのです。
イタリアのEnzo Mariの本を読んだら、イタリアに行ってみたくなる、実際に作品も見てみたくなる、お店に行ってみたくなる、店主と会話して声を出して、聞いて、見て、そして世界が広がる。こういった五感を使った好循環が生まれる要素を持つのが本だと思うんです。
本にするからには、著者には「猛烈に伝えたい!」”何か”があるわけで、その「衝動と熱量」というのは、PCでキーボードを打つよりも何倍も強いはずなのです。
その「衝動と熱量」を読者は自由に感じたり解釈することができ、それが本の唯一で無二の魅力であると私は信じています。
2021.09.23 テキスト/小玉