Man Matter Metamorphosis 10 000 Years Of Design

こちらはMan Matter Metamorphosis 10 000 Years Of Design。2018年12月にフィンランド国立博物館にて開催された展覧会の図録です。フィンランドにおけるモノとヒトの歴史を300点以上にわたって掲載。時系列に掲載するのではなく、新しいもの、古いものを並列に掲載することで、素材の変化、色の変化、フォルムの変化、さまざまなものが浮き彫りになって表すことに成功している名著です。

私は掲載されているものの中でも、石器を見たくてこの本を借りることにしました。

石を磨いて作る摩製石器は新石器時代の代表的な道具。
日本では旧石器時代から使われていたというのです。
これらは石斧などの農具だけではなく、「見る」対象として作られたものもあるそう。
石というのは今も昔も人々を惹きつける対象になってきたようなのです。

現代の人間は川辺に行けばつるつるとした石が手に入ると知っているし、車を走らせ探しにいくのが私の周りではほとんど。ごつごつとした石を磨いてつるつるにしようという発想の人は見かけません。逆に自然にできたフォルムに惹かれるという人が多いように思います。新石器時代の人も川辺に行けばつるつるした石があることは知っていたかもしれないけれど、農具になりそうなものはない。ではどれくらい時間をかけて石器を作ったのでしょう。
実際に石を取り寄せてやってみました。

まず取り寄せた石はサヌカイトという石。讃岐岩とも呼ばれる通り、香川県で多く獲られる石です。
サヌカイトは縄文時代の石器などでも多く使われたそう。硬度はおおよそ7。水晶と同じくらいの硬さ、ダイアモンドは10。wikipediaによると「サヌカイトという名称は、明治政府に招かれ、日本各地の地質を調査したドイツ人地質学者ハインリッヒ・エドムント・ナウマンが、讃岐岩を本国に持ち帰り、知人のバインシェンクが研究して命名した」とあります。なんとなくドイツ人が好きそうな石、ホントなんとなく笑 香川県はイサムノグチがアトリエを構えるほど、石材の豊富な県です(イサムノグチが好んで使ったのは、庵治石)

下、写真左が私が4日間一日中磨いたもの。右が書籍に載っていた石器。
ご覧の通り全然違う笑
一番すごいと思うのは、溝の部分まで丁寧に磨いてあること。
ただ先端を鋭利にしたいことが目的だったら、溝の部分まで磨かないのではと思うのですが、
この時代から、人間は「磨く」ということを道具にするための行為ではなく、美しさも加えることができる行為と認識していたのではないでしょうか。そこには、出来上がったものが美しいものであってほしいという信念を持っていたのではないか、ということが分かります。
この溝を磨くのは本当に大変で、結局つるつるになるまで磨くことはできませんでした。
もちろん使っていくうちに擦り減りながら、フォルムが形成されるとは思うのですが、
当時の研磨の技術と根気には驚かされました。

この本は本来はフィンランドの文化を形成してきたものを紹介している書籍なのですが、美しい写真とフォルムのアイテムが多く、何回も借りて一つ一つ深掘りしていくのも面白い書籍です。

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