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本で感じる創造性の共鳴と波紋

(※こちらのトピック作りは長野県を拠点に物や社会の持続可能性にフォーカスし活動するお店「Ph.D.(フッド)」の代表荒井氏にご担当頂きました。Ph.D.はヴィンテージアアルトの家具を中心に展開されている国内屈指の店舗であり、世界でここにしかないアップサイクルプロジェクトではアーティストと共同で制作されるオリジナルテキスタイルを使った作品を生み出しているデザインスタジオです。MMSSでは今後会員さまに限り「私もトピック作りや本選びをやってみたい!」という方を募集して参ります。MMSSで生まれた収益は「100年後に残すべき美しい本の購入代」などに充てさせて頂きます。ご興味のある会員さまはこちらよりお気軽にお問い合わせください。)

Ph.D.が取り扱う家具はアアルトがデザインした初期のアイテムがメイン、モダニズム期初期のアイテムを多く取り扱っていますが、年代や国を超えてその価値観に影響を受けたクリエイターたちの書籍を集めてその共通点を探ってみたくなりました。

題名には、アアルト/日本語で波の意味を連想させるような「共鳴」、アイノ・アアルトがデザインしたプレスガラスのシリーズボルゲブリック/日本語で「波紋」の意味を取り入れてトピックタイトルとしました。

アーティスト、ドナルド・ジャッドは自身もアアルトの家具のコレクターであり自身のアトリエでもアアルトの家具を使っていたことは有名です。

その作品はミニマルアートというジャンルに属され、驚くほどの潔さが特徴です。一見理解するには時間がかかるようなアートですが、アアルトの家具の魅力を抽象したような作品とも捉えることができると思います。今回の書籍からもそれを感じてもらえるのではないでしょうか?

ファッション関連の書籍からは、日本のモード界を牽引し続けるCOMME des GARCONSの初期の書籍をピックアップしました。

同ブランドとアアルトが設立した会社アルテックの設立80周年を記念したダブルネームのstool60を展開したり、ショップでビンテージのstool60を販売するなど関係性が強い両者。モードやモダニズムという言葉からもそれが伺えるかと思います。

COMME des GARCONSの創造と精神に影響を与えたであろうモダニズムという文化。その精神を色濃く感じる当文化初期のアイテムに座りながら書籍を楽しんでほしいです。

デザイナー、エンツォマーリ。昨年惜しくも他界してしまいましたがその哲学は今のクリエイターにも大いに参考になるのではないかと思います。

1974年にデザインされアルテックより2010年から2019年までリリースされたDIYによって組み立てる家具のシリーズ「sedia1」 。

その哲学はアアルトビンテージのペイントをされた個体の価値を肯定する考えともよく似ています。

エンツォマーリのデザインは時代への大きなメッセージを含んだものが多くそれは今現在私たちが求めている何かを指し示しているように思えてなりません。時代を先見していたデザイナーのひとりといえるでしょう。

visionは唯一のフィンランド語の書籍、晩年のアアルトと同時期にも活躍していたデザイナー、ティモサルパネヴァがアートディレクションを務めました。

そのビジュアルはプロダクトの紹介の枠を飛び越えて直感に訴えかけるような芸術性に富んでいます。モダニズムという文化の系譜を辿るプロダクトはそのシンプルな形状や考えがゆえに何かを付加しやすいのも特徴。

そこに個としての芸術性を付加した良作で、当時の文化を物語る貴重な書籍となっています。

時代にあった創造性をどのような形で発揮していくかクリエイターにとってはそれに尽きるのではないでしょうか?

コロナ渦において変革を強制的に押し付けられた状況に、個の力が露呈したと最近つくづく感じています。

分断されたコミュニュケーションの中で自分と向き合うことが多くなったり、どのように今の状況に向き合い環境に順応していくか、その中で必要なものは個の力、創造力のほかありません。

今回の選書を通じてこれからの時代を築いていく創造に満ちた力を呼び起こすような取り組みになれば嬉しいです。

2021.10.03 荒井 健次/Ph.D.(フッド)代表

Ph.D.(フッド)とは

長野県東御市に2016年に設立した物や社会の持続可能性にフォーカスしたデザインスタジオです。 自然豊かな地で世代、国境を超える生活の道具の販売と修理、張替えを主軸に、今の時代に適した創造の仕組みやアイデアを発信しています。 ヨーロッパを中心に世界各国より選りすぐりのヴィンテージ家具を提供しております。 長年の経験で培われた技術力による修理や張り替を全て一貫して行う事により様々なニーズに応える事が可能です。 またリース、コーディネート等実際にお使い頂く場に合わせて様々なサービスのご提案が可能です。 各種お持ち込みでの修理、張替え依頼、代行輸入も随時承っています。

2020年には長野市に独自の感性が漂うビンテージ家具の倉庫「Ph.D.stock hue」オープン。

同年にはカフェ「North South East West」とアウトドアショップ「NATURAL ANCHORS」と共に運営するイベントスペース兼ギャラリー「Lighthouse」をオープン。様々なクリエイティブなサービスを提供するとともに様々なクリエーターが集うオープンアトリエ、ギャラリー、イベントスペースとしても機能しています。

アップサイクルプロジェクト「oops」の展開

荒井氏はテキスタイルデザイナー氷室友里氏を始め様々なクリエーターとコラボレーションによるものづくりで「ごみという概念をなくす」環境負荷に配慮した新しい取り組みを行っています。 このプロジェクトでは端切れを素材にパッチワークにて張替えを施したビンテージ家具を作品として発表するとともに特異性に長けたデコレーションや作品作りなど様々なアイデアを具現化、提案しています。 各種OEM、お持ち込みのデザインによる造形物の製作も承っています。

Ph.d. 公式サイト : https://www.ph-d.jp/

Ph.d. インスタグラムアカウント : https://www.instagram.com/ph.d.______/